インタビュー 私の10年未来予想図
―10年後、ITはどうなっていて、あなたは何をしていますか?
Vol.2
「サイドフィード株式会社 赤松洋介 氏」

代表取締役
http://sidefeed.com/ja/
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  • 速いサイクルで進む技術革新やビジネスの変化によって、IT 業界とそこで働くエンジニアの環境も日々大きな変化にさらされています。こうした変化を受け止めつつ、10 年後にどうなっていくのか、どうなっていたいのか。業界のキーパーソンにインタビューしました。
  • ■いつか独立したいとぼんやり考えていました
  • ─── 赤松さんは、サイボウズを辞めていまの会社「サイドフィード株式会社」を立ち上げられたわけですが、多くのエンジニアは会社を辞めたいと思ってもなかなかそうはいきません。辞めた理由や、そのときの背景を教えてもらえませんか?
  •  だいたい僕は 3 年で飽きて 5 年で辞める、というパターンなんですよ。 (笑)
  •  もともと、いつか独立して自分で会社を始めてみたいなとぼんやり考えていました。で、新しいことを始めるにしても経験も何もなかったので、関西で小さい会社でベンチャーということで、サイボウズを見つけて入社しました。
  •  サイボウズは当時、社員 10 人でいけいけの時代。入社してすぐに東京に行くことになりました。最初はプログラミングもちょっとやっていたんですけど、そのあとプロダクト マネージャーになって。
  •  そこで数年過ごしたあと、法人向けにネットサービスを提供するといったことをやっていて。すでに世の中にはネット上にいろんなサービスがあったので、それって実際にどんな人がやっているのか会いに行ってみようと思ったんです。
  • ■個人の看板で勝負したい
  •  百式のイベントで「忘年会議」というのがあって、年末のイベントで、この 1 年の面白いサービスをピックアップしようという企画でした。知っているサービスも知らないサービスもあって、開発者が来ているので話を聞いてみましょうとか。そうすると若い学生みたいな人が壇上に上がってしゃべるとか。
  •  これに衝撃を受けたんですね。こうやって個人でサービス立ち上げていろいろなつながりができるのはすごく面白いなぁと。で、その人たちと話をしてみたいと思って「サイボウズの赤松です」と言っても、まったく興味を持たれない。企業の看板背負っている人と、個人の看板で戦っている人の違いが鮮明に感じられたんです。
  •  これじゃいかんなと。自分で個人として付き合うとどんな面白いことが引き出せるのか、アピールできないといけないと思いました。
  • ─── それでサイボウズ在職中に、個人でサービスを作り始めたんですね。
  •   このままだと人としての興味を持たれないんじゃないかと思って。それで最初に MyRSS.jp を作りました。久しぶりのプログラミングでした、PHP で。
  •  その MyRSS.jp は、立ち上げたけれども驚くほどにアクセスがなくて。世の中にサービスを広めるのってこんなに難しいんだと思いました。
  •  そうこうしているうちに年が明けて、ほかのものを作ってみたくなって、Feedmeter を作って公開しました。今度は朝起きてびっくり。3 日間で 100 万 PV を突破していたんです。誰かがブログに取り上げてくれて、それが広まっていってと、すごいアクセスになって。それがけっこう強烈な経験になっています。
  • ■パラダイムシフトが起きているのではないか
  •   わずか 2 日のプログラミングでこんなにアクセスを獲得できた一方で、当時サイボウズでは大金をかけてマーケティングのために広告を出してアクセスを買っていたんですね。しかも獲得単価は上がってきている。
  •  だとすると、マーケティングの仕方自体にパラダイムシフトが起きているのではないか。これからは、良い製品が人の力でどんどん広まっていく環境ができてきているのではないかと思ったんです。
  •  じゃあ、そのマーケティングのやり方をパッケージできると面白いことができるのではないかと。
  •  ちょうどそのとき、サイボウズの社長 (当時の高須賀社長) が辞めるという話もあって、その年の 7 月に僕もサイボウズを辞めました。
  • ■日本のエンジニアの可能性
  • ─── 赤松さんは開発合宿をしていると聞いています。
  •  合宿は、私と百式の田口さんとのネットワークで面白いエンジニアがいると思ったら呼んでみる、固定のメンバーにしない、というのと、必ず毎回違う場所に行くというルールで行っています。
  •  サービスを作るときに、企画、プロトタイプ、仕上げるという 3 フェーズがあるとすれば、合宿でプロトタイプを作ってしまって、みんなに見てもらってフィードバックしてもらう、そういうのが効果的かと思います。
  • ─── 開発合宿はエンジニアの誰にでもおすすめできますか?
  •  これが難しくて。サイボウズでも合宿をしたことがあるのですが、自主的に参加する合宿と、連れて行かれるのはまったく違っていて、自主的に参加しないのであれば、合宿ってたぶん意味がない。会社の中にいるのと変わらないと思います。
  •  ただアイデアを出すには制約も必要だと思っていて、合宿先の旅館だと場所も狭いし、モニターも 1 つだし、正直オフィスの方が快適です。ですが、そういう制約がある方が、アイデアは出たりします。
  •  開発環境もエンジニアそれぞれだし、見せ合う機会なんて普段はないですが、合宿だとそういうのもできるし。
  •  開発合宿はおすすめですが、そういうことをあらかじめ理解しておいた方がいいでしょうね。
  • ■日本のエンジニアは世界で通用すると思う
  • ─── ただ、日本のプログラマはオフショアに仕事を奪われたりしつつあります。
  •  オフショアがなんで脅威かというと、彼らが日本語をしゃべるようになってきたためで、そんな攻められ方をするのは全然ダメじゃんと思います。日本語より英語の方が簡単なんだから、こちらが英語をしゃべれれば日本人のエンジニアの能力をもっと世界に出せるのではないかと。
  •  日本のエンジニアってレベルがそれなりに高いし、設計する力や構成する力はあります。プログラミングという仕事の価値はどんどん下がっていくと思いますが、設計などいわゆるデザインの仕事は繊細なものがありますし、世界へ出て頑張ろうよって、もったいないなあと思います。自分もまだできてはいないですけど。
  •  IT ってサーバーの台数を増やせば効率が上がってレバレッジが効くというのが本当の話のはずなんですけど、日本のほとんどの IT と呼ばれる企業は大量の営業マンがいて、営業マンが東京にいて会社へ訪問して販売している。
  •  日本の仕組みが東京集中型になっているおかげで、Web で広告を出すより営業マンがビルの上から下まで回って営業している方が早かったりする。そこが悲しいなあと思って。
  •  いまのところ営業マンにとって東京集中型の日本は効率のいい国になっているので、IT でそれよりももっと効率のよい仕組みを作れれば、世界にもっと通用するはずだと思うし、言語の壁も自然に超えていけるようになるのではないかなと思っています。それを目指したいですね。
  • ■身の回りのものがネットワーク化されていく
  • ─── 10 年後の IT における個人や、この会社がどうなっているかを想像してみてもらえませんか?
  •   難しいですよね、10 年後ですよね。
  •  まず、いろんなものがネットワーク化されると思っています。身の回りのモノがもっとネットワーク化されるとほぼ確実でしょう。そのネットワークを使って何するべきかはまだ分からないですけど。
  •  ただ、例えば医者に行ってちょっと待っている時間とか、いまはすごくもったいない。何もしなくてぼーっと待っているとか、ゲームやっているとか。でもゲームとかではない IT の方法で、もっとそういう時間を効率化したり、有意義に過ごせたりできればいいなと思っています。
  •  私自身は、そういうみんなの人生を濃くするとか、もっと生活を効率的にするものを 1 つでも 2 つでも生み出せるといいなと。それがビジネスなのか日常なのか分からないですけど、無駄な時間をちょっと減らすというのができれば。
  •  1人の時間を一生の間に 5 分節約できるとして、全世界 80 億近くいるとしたら、それを掛けるとすごい時間になるじゃないですか。自分の生きた時間にそれだけの価値があるって、ものすごいことだと思うんです。
  •  そのころには IT やネットはコモディティ化していると思うので、それを基盤にして何をするか、だと思います。
  • ─── そういうサービスを提供するのが、赤松さんの成功のイメージですか?
  •  そうですね。まあ、飽きていると思いますけど (笑)
(2009 / 1 / 22 公開)