速いサイクルで進む技術革新やビジネスの変化によって、IT 業界とそこで働くエンジニアの環境も日々大きな変化にさらされています。こうした変化を受け止めつつ、10 年後にどうなっていくのか、どうなっていたいのか。業界のキーパーソンにインタビューしました。
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- ■小さなソフトウェアにもチャンスが増えてくる
- ─── 小野さんはエンジニアの働き方や IT 企業のあり方などについて、よくブログで発信していますね。最近では、小野さんのブログで取り上げたマイクロ ISV の話題を興味深く読みました。
- そうですね。以前に「この先 10 年で、働くことの意味がきっと大きく変化する」というエントリを書きました。いまはほとんどのプログラマが会社に社員として所属して仕事をしているんだけれど、実は会社がやってくれていることって大したことじゃないんです。仕事のマッチングと金銭授受の代行だけ。
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それから大きなところでは、信用を提供する、というのもあるけれど、そういうブランディングは実は会社より個人のほうが今はやりやすい。
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だからこれから開発者というのは、「マイクロ ISV 」というのか、単なるフリーランスとは違う形態で働いていけるんじゃないかと思っています。
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─── 小野さん自身も、8 年くらい前にいまの会社をはじめられた。
- 学生のころにプログラマの仕事をして、そのあとサン・マイクロシステムズに入社してアメリカで半年ほど働いたんです。そこで先進的な開発プロジェクトを見てきました。例えば、開発に行き詰まるとリーダーがメンバーみんなを突然「明日からリゾート地にいくから」と連れて行ってしまうんです (笑)。そうやって行き詰まって視野が狭くなっているところからみんなを抜け出させる。日本では絶対にみんなで徹夜の場面。
- 会社を始めたのは、そういう開発プロジェクトのいいところと、日本のきめ細かな開発のいいところを合わせられると思ったからです。
- そのつもりではじめた会社なのに、まわりからは「なんで小さな会社をやってるんだ」とか「Google を凌駕するサービスを狙わないのか」「世界を変える気がないんだったらやってる意味ないよね」なんていわれて、いけないことしている気がして。
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そうしたらちょうど、ブログでも取りあげたこの本、エリック・シンクの「革新的ソフトウェア企業の作り方」を読んで、すごく肯定するところがあった。
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─── 小さい組織にもたくさんの可能性がある、と。
この本にも出てくる樽の中の石の話。樽の中に大きな石は 3 つくらいしか入らなくても、そのスキマに小さい石はたくさん入る。
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大きいところを狙っても、ナンバーワンになれる可能性は低い。グーグルみたいになろうと狙ったけれどとても及ばず、名も知れぬサービスを作ってみました、といっても何にもならない (笑)。けれど小さいところだったら、ナンバーワンをとりやすい。
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10 年前と比べると、企業がパッケージを導入することが増えてきていて、それで何が起きるかというと、大きな石の組み合わせにスキマが大きいのと同じで、きれいにはつながらない。そのすき間に「あ、ちょうどいいのありました」というソフトウェアが必要で、だから小さいソフトウェアのチャンスが増えるんです。
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企業はデータベースや ERP は必ず使う、こういう大きな石はシステムの中で必ず使う。そういうのを使うと必ずスキマができて、そこにいろんな ISV が入っていくチャンスがでてくると思うんです。現実にそういうことに挑戦する ISV がでてきているかというと、たしかに出てきてはいないかもしれないけれど、チャンスは増えてきている。
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- ■交換可能なメッセージではダメ
- ─── みんながそういうチャンスに気が付いているかというと、まだそうではないですよね。
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よくあるのが、エンジニアが資格を取って、こういう資格があって仕事ができます、ということを会社やエンジニアが仕事をもらうために宣伝している例。
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これでは同じ資格を持っているほかの人と交換可能なことを示しているのであって、そうじゃなくてあの人はこんなシステムを作ったことがあるとか、こんな短期間にできるとか、自分自身がワンノブゼムではなく、自分にしかできないことを言わないとダメ。いきなりナンバーワンにはなれなくても、こういうことを心がけている、というのでもいい、そういうのをアピールできないと、そういう自分にしかできないことを見つけないと、ISV でも SI でもどの業態でも、よい仕事や顧客とめぐりあえないのではないでしょうか。
- ─── それは大きい組織にいても、小さい組織にいても関係ない。
- そう。大きな会社で、会社自体は資格アピールなどで交換可能なメッセージをばらまいたとしても、エンジニア個人としてはなにかオープンソースとかで開発実績、こういうのを作ってますということをしていたり、ブログを書いていたりすればそういうエンジニアとしての自分の立ち位置を示せる。
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生き残るためにも、というか、自分たちにどういう高付加価値があるかを個人でも持っていないといけないし、今は大きな会社より個人とか小さな会社のほうがそれをやりやすくなっています。
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だから自分が誰かと交換可能ですみたいなメッセージじゃなくて、彼はあれができる、とか、こんな実績がある、といった個人や組織の評判「レピュテーション キャピタル」と言うらしいけれど、そういうのがすごく重要。
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昔の企業は、システムを全部作るしかなかった。今は企業のシステムを作るのに、パッケージソフトを使って、自社のライブラリもつなげて、ネットのサービスにもつないで、という感じで作る。だから、ISV のいろんなパッケージを組み合わせて作るというのが広がっていて、Web 2.0 的に見ればパッケージ自体は衰退していくといっているけれど、でもエンタープライズはなくならないし、小さな ISV やマイクロ ISV が取り組んでナンバーワンになれる小さな石はやっぱりたくさんあると思う。
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- ■エンジニアとしての幸福感を持てる職場が増える
- ─── 小野さんの身の回りも見回して、10 年後にどんな感じになってますか?
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最近ちょっと面白かったのは、採用を 1 年くらい前から方針転換していて、今いちばん社員の募集で効率がいいのはTwitterなんです。僕が、Twitterに「突然ですが社員を募集します」と書くと人が集まってきた。今はそれが、実はいちばん効率がいい社員募集になっています。
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これ、最初僕が思いつきで Twitter に書いたんです。
- エンジニアが働き方に何を求めるかというと、昔はプログラマ、SE、コンサルというキャリアパスが大事だったんだけど、今は誰と仕事をしたいとか、尊敬する人と働きたいとか、ある技術を極めたいとか、そういう感覚が強くなっていると思う。
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Twitter で人を募集すると、最初から友達という感覚で「風邪なおりましたか?」とかフレンドリーな面接になる。今までだと面接で「志望動機は?」とか「給料はいくらくれるんですか?」といったやりとりだったのだけど。
- うちの会社はそうやって入ってきた人が増えてきて、エンジニアとしての働き方で言うと、すごく関係がいいし、働いている幸福感というのが職場にすごくあると思っている。10 年後にはこういう採用の仕方というのがたくさん起きてくるんじゃないかと。
- 交換可能なただのエンジニアではなくて、どういう自分なのか、エンジニアなのかをもっと出していくと、それを求めている人とつながっていけると思う。
- ─── Twitter とかブログとか、会社を超えたコミュニケーションが日常的に起きているわけですね。
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Twitter なんてつぶやいているだけだし。眠いとか、どうでもいい情報もいっぱいあるけれど、それでもいい。ブログもそう。一緒にいて働ける人かどうかアピールする場にもなるし、エンジニア同士がやりたいところをさらけだしておいて、マッチしたら一緒にやっていく、というのはこれから増えるんじゃないでしょうか。
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それが会社の中で起きても、集まって会社を作るのでも、プロジェクトを作るのでもいいんじゃないかと思います。
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ISV とか会社を作るのは難しいと思われているんだけど、それほど難しくないし、さっき話したように採用もどんどんやりやすくなってきた。結局そうやって競争して、よりよいものを作っていって、いい人達が残って、今よりいい IT 業界になったらいいですよね。
(2008 / 11 / 14 公開)